たのしいコーヒー

堀口珈琲が考える“おいしい”ドリップバッグができました

堀口珈琲が考える“おいしい”ドリップバッグができました

2024年3月、堀口珈琲から新しい商品が登場します。

 

より多くの方にスペシャルティコーヒーを手軽に楽しんでいただきたいという強い思いから、そして、お客様からの熱いご要望に応えるために、一杯分に必要なコーヒー粉がフィルターに詰められたカップオンタイプの「ドリップバッグ」を新たにラインナップへ迎えます。

 

ドリップバッグという商品自体は特に目新しいタイプの形状ではありません。多くの皆様がお手に取ったことがあるのではないでしょうか。多くのロースターが自社のドリップバッグを開発していますし、他業種も参入しやすくアパレルやインテリアショップなど様々なお店のオリジナル商品として販売されることも珍しくありません。

 

しかし、しっかりやりきることはどんな商品においても難しいこと。

細部の品質にまでこだわり、おいしさをとことん追求したドリップバッグがはたして世の中にどれほどあるでしょうか。

 

手軽さを強みとするために品質やおいしさから目を背けることは簡単です。そもそもこだわる必要がない、と考えるのもひとつの考え方です。

しかし、堀口珈琲はスペシャルティコーヒーの専門店として、そしてスペシャルティコーヒーのパイオニアとしてコーヒーにとことん真摯に向き合います。

そんな我々がドリップバッグだからと言って妥協できるわけがありませんでした。

 

手軽に様々な方が利用する簡易的な商品だからこそ、スペシャルティコーヒーのおいしさ、おもしろさに繋がる体験をしていただける商品にするべきだ。そう考え、商品開発に取り組みました。

 

今回はそんなドリップバッグ開発の過程で当社が特にこだわったポイントをご紹介していきます。皆様に「やっぱり堀口珈琲は信頼できるよね」と思っていただけるよう商品づくりに向き合いました。ぜひ、ご覧ください。

 

 

 

1.新登場ドリップバッグ


 

手軽に当社のコーヒーを楽しんでいただく商品として、お湯に漬けるだけのダンク式(ティーバッグのようなタイプ)のコーヒーバッグという商品があります。必要なものはカップとお湯だけという簡易性に優れた商品です。

すっきりした軽めのコーヒーとの相性はとても良いのですが、粉量の制限などから、当社が最も得意とする深煎りをコーヒーバッグの風味に落とし込むのは非常に難しいものでした。

 

そこで注目したのがドリップバッグです。
簡易的でありながらも、コーヒーをドリップしていれるという体験と、より多くの粉量を使用できることから風味のボリュームという点でドリップバッグには利点があります。そのため、簡易的な商品のなかでもドリップバッグに絞って開発に着手。コーヒーバッグとドリップバッグ、双方の強みを活かせる商品展開を目指しました。

 

 

 

2.堀口珈琲がつくる価値


 

前述した通り、ドリップバッグは特に新しいタイプの商品ではありません。
しかし、世の中にあらゆるドリップバッグがあるからこそ、そこには堀口珈琲のエッセンスが必要であり、お客様に価値を感じていただかなければなりません。

堀口珈琲は徹底的に素材にこだわる会社です。
年間何百種類もの優れた品質のコーヒー豆からさらに厳選したもののみを扱い、徹底した品質管理のもと横浜ロースタリーで焙煎・選別を施し磨きをかけています。

そんな最高品質の素材をドリップバッグに最大限活かすこと。
それが、手軽にスペシャルティコーヒーの多様性に触れ、そのおいしさやおもしろさを体験していただくことに繋がる価値だと考えています。  

 

もっと知りたい!⇒ 『堀口珈琲が徹底的に素材に向き合う理由』

もっと知りたい!⇒ 『横浜ロースタリー紹介』

 

 

3.最高品質のコーヒーを最大限活かすために


 

日々、コーヒー豆の販売を通じて最高品質のコーヒーを製造し続ける私たちですが、そんな素材をただフィルターに詰めるだけではそのポテンシャルを“最大限活かす”ことにはなりません。
そこにはドリップバッグならではの可能性があり制約があります。
今回は「形状」「粉量」「挽き目」の3つの観点で、検証する中でこだわった点をご紹介します。

 

 

3-1.「形状」


 

ドリップバッグのフィルターには大きく分けて3つの形状があります。

下の写真、左から「フック型(アーチ形)」「VFR型」「コニック型(円錐型)」と呼ばれています。

 

 

それぞれに特徴があり、得意・不得意があります。私たちが求める手軽さと風味を一番実現できる形状はどのタイプなのか。まずはここから検証することにしました。

複数の業者からサンプルフィルターを取り寄せ、当社焙煎のコーヒーを手詰めして抽出。比較しながら風味を確認します。
一種類のコーヒーでは検証できる幅が狭いため、複数の産地、複数の焙煎度で検証を行いました。

 

検証を続ける中でいくつかの傾向が見えてきました。

 
■フック型(アーチ形)の傾向

良い点
・最も普及している形状のため、お客様が使用する際にわかりやすい。
・粉量を多く使用(15g)できるため、コーヒーの濃度を出しやすい。
・フィルターがカップの底近くまで入るので安定感がある。

懸念点
・フィルターの大部分が抽出液に浸かるため、必要以上の抽出が進んでしまい浅い焙煎でも深い焙煎でも渋苦さを一番感じる。

 
■VFR型の傾向

良い点
・比較的普及している形状のため、お客様が使用する際にわかりやすい。
・粉量を多く使用(15g)できるため、コーヒーの濃度を出しやすい。
・フック型に比べフィルターが抽出液に浸からないため雑味が少なくクリーン。そのため風味をしっかり感じられる。

懸念点
・フック型に比べフィルターに高さがないので、一度にたくさん注ぐと溢れてしまう可能性がある。

 
■コニック型(円錐型)の傾向

良い点
・ペーパードリップ(円錐形)の感覚に最も近い。
・フィルターがほとんど抽出液に浸からないため雑味が少なくクリーン。そのため風味をしっかり感じられる。

懸念点
・淹れ方によって味わいの差が大きい。楽しさがある一方で難易度は高くなる。
・仕様上12gまでしか粉を使用できないため、深煎りは薄苦くボディが弱い印象。

 

当社が目指す深煎りやしっかりした味わいをドリップバッグで最大限表現するためには、やはり粉が15g充填できるVFR型かフック型良いという結論になりました。12gに比べ、苦みやボディ、密度のある味わいを感じることができ、求める風味に近かったからです。

さらに、同じ15gでも液体に浸かる体積が少なく、過抽出による雑味が感じにくいVFR型の方が、より風味をクリーンに感じられるので、検証メンバー全員一致でVFR型の採用が決まりました。

 

 

3-2.「粉量」


 

ドリップバッグの粉量は一般的に8gから12gに設定したものが多い傾向にあります。
製造上の制限によるところもありますが、粉量が多いと一度に入れられるお湯の量が少なくなることや、コスト面といった理由もあるでしょう。

一方で、風味の観点から言えば、フック型でもVFR型でも、浅めの焙煎深めの焙煎問わず15gの方がキャラクターをしっかり感じとることができ、かつボディもしっかりありました。深煎りでは飲みごたえも感じられます。
粉量が多いほど、その分味わいを引き出すことができ、濃度も高くできるので当たり前といえば当たり前なのですが、12gと15gの差は大きく、1杯の満足感に大きく影響することを実感しました。

風味の満足度や表現できる幅は堀口珈琲のドリップバッグとして何よりも大切にしたいポイントです。そのため、すべてのラインナップで15gという選択を取ることにしました。

実は粉量を多く使用すると、当社のような鮮度の高いコーヒーの場合、焙煎によって生じる炭酸ガスの影響で個包装袋がとても膨らんでしまいます。そのため6袋入りの外箱を少し大きめに設計しました。大きくて持ちづらいなと感じた方は、それは鮮度の証だと思っていただけますと幸いです。

 

 

 

3-3.「挽き目」


 

挽き目はコーヒーの抽出において風味に大きく影響を与える要素のひとつです。
それはドリップバッグにおいても同様です。

基本的に挽き目と味わいの関係は

・挽き目を細かくする⇒味わいは出やすくなるが、雑味も出やすくなり微粉も増える。
・挽き目を粗くする⇒味わいは出にくくなるが、雑味・微粉が少なくクリーンに仕上がる。

このような関係です。
この前提を踏まえて、15gという条件のなか風味をクリーンにバランス良く楽しめる挽き目はどの程度の粒度なのか、検証しました。

いくつかのコーヒーを5パターンの挽き目に分けて粉砕します。
それぞれの風味をチェック。
温かい時、冷めた時、数日置いた状態の時、複数の条件下でチェックを行い、評価していきます。
その結果、コーヒーごとに最も評価の高かった挽き目に差が出ました。
比較的浅い焙煎度は少し粗めに、深めに焙煎したコーヒーは少し細かめに挽いた粒度が適切でした。それぞれ、雑味を感じにくく、かつバランス良く味わいを楽しむためには、コーヒーごとに挽き目を変える必要があるのです。
そこで、求める風味によって、商品ごとに挽き目を変更する、という選択をすることにしました。

また、官能チェックを補完するため、検証時に専用のツールを使用して粒度分布も計測しています。粒度分布とは、粒子の集合体である「粉体」の粒子径の広がり(分布)を表したものです。分布図と測定データから粒度の最小値、最大値、中央値、分布などがわかるのですが、数値上も評価の高かった挽き目は微粉が少ない傾向でした。

 

 

 

4.さいごに


 

今回ご紹介した点以外にも開発時にこだわったポイントはたくさんあります。すべてをご紹介していると日が暮れてしまいますので今回はここまでに。
また別の機会にご紹介していきたいと思います。

今回選択した「形状」「粉量」「挽き目」はどんな状況においても必ずベストな選択、というわけではありません。求める品質、求める風味、求める商品コンセプトによってその選択は変わるでしょう。
私たちのドリップバッグは、素晴らしい素材を最大限に活かし、品質とおいしさの観点からスペシャルティコーヒーの奥深き世界の入り口となるような商品を目指して開発を進めました。

新しく登場した堀口珈琲のドリップバッグを、どうぞよろしくお願いいたします。