パパ日記

昨日の続き

昨年の11月には、SCAAの後援もあり、stumptoun、intelligentsia、counter cultureその他数社を訪問しました。
多くはスターバックスの成長期の1995年以降に設立された会社で卸売で成長した会社です。スターバックスは2000年前半、世界のコーヒー生産地で多くの良質の生豆を購入していました。グァテマラ・アンティグア、コスタリカ・タラズ、コロンビア・ナリーニョ、ケニアその他でその痕跡が見られました。

 

堀口珈琲が現在使用している優れた農園である「サンタカタリーナ」も「ブラックバーン」も10年前はスターバックスが購入していた農園です。しかし、世界的店舗数の増加と使用生豆の急激な増加は品質の維持を困難としているのではないかとも考えます。

 

 

2000年頃からの世界的なスペシャルティコーヒーのムーブメントの中で、2000年前半頃から卸売マーケットで急成長してきたのが上記の会社などです。
これらの会社はコーヒーショップを数店出していますが、基本的な考えはショールームであり、チェーン店ではありません。会社の顧客はコーヒーショップやレストランであり、それらの顧客のためのトレーニングセンターが最も重要な位置を占めます。
カウンターカルチャーなどはトレーニングセンタのみでショップを持ちません。

 

これらの会社はここ数年で生豆使用量も増え、60k換算で年間2万~から4万袋程度の大きな使用量となっています。卸売りが90%を占めますし、またハンドピックなどもしていませんのでハイエンドの品質かどうかについては最終的には賢明な消費者の判断にお任せします。

 

もちろん彼らにはよい面も多くあり、スターバックスに続くスペシャリティコーヒの牽引者でありましたし、成長の過程でパートナーシップやダイレクトトレードという方向にも向かいつつあります。
プロバットやゴットホットのビンテージ焙煎機を使用するなど機械化よりも5感を重視した焙煎をしています。またスターバックスとの違いを際立たせるのでしょうか?浅いローストも特徴で、酸と甘みを表現する傾向にあり、エスプレッソ以外にペーパードリップも行っています。

 

 

またこれらの動きとは別に、米国にもマイクロロースターの動きが多く見られました。サンフランシスコの優れたコーヒー会社であったピーツコーヒーは大きくなり、ブルーボトル、サイトグラスなどの新しいショップにも注目が向かいました。
米国のポートランドには50のマイクロロースターが誕生し、典型的なコーヒーショップには店内に焙煎機があります。自店分のローストからスタートし次第に卸売に発展します。
コーヒーが好きで、トレサビリティがわかるコーヒーを使用し、浅いローストをし、エスプレッソからペーパードリップやコーンも使用しています。
これ以外にも北欧、オーストラリアなどでも様々な動きがあり、世界中の情報が氾濫し、メディアや新規開業者に様々な印象を与えるのでしょう。

 

 

しかし、冷静に見れば日本でもすでに2000年の初めの10年前にこのような動きがありました。アメリカの動きばかりに目が行きがちですが、2000年以降日本では3000店くらい(推測)のビーンズショップ(マイクロロースター)が生まれています。
その一部は、スペシャルティコーヒーを模索し、日本におけるスペシャルティコーヒームーブメントの牽引をしてきました。米国や北欧よりはるかに多くのショップが展開されたわけです。ここを見落とすと、スペシャルティコーヒーの本質を見失うでしょう。

 

 

しかし、メディアは、この日本のスペシャルティコーヒーのムーブメントの10年間を素通りし、一部の米国や北欧のトレンドしか見えないため、「スペシャルティコーヒーとは何で?どのような過程を経てきたのか?その香味の変遷は何か?」などその歴史や本質が理解できないまま情報発信してしまう傾向にあります。

 

 

その結果、みんなが「シングルオリジン」がいいといいだしてしまうわけです。
ローストは浅いほうがいい、シングルオリジンならいいというようなとらえ方は一面にすぎず、コーヒーの品質や香味の本質とはかけ離れたものです。コーヒーの香味で最も重要なことはその多様性であり、そのことは土壌、品種、精製、ロースト、抽出などを多面的にとらえていけば自ずと理解できるでしょう。ですから、よいコーヒーの道案内をすること、よい消費者を生み出していくことは堀口珈琲の重要な仕事だと思っています。

2010年代に入り、今度は米国の動きに影響された人たちが日本に増えてきています。
米国の「0000」のような自家焙煎店(マイクロロースター)をやりたいという人たちが目立ち始め、かつ開業しつつあります。

 

 

この場合、いいコーヒーを消費者に伝えたいという発想からの開業と、あんな店をやりたいという形から入る開業ではその本質は異なります。LCFでは「いいコーヒーの香味を消費者にお伝えし、その楽しみや感動を共有したい」という基本を重要と考えていますので、安易な出店についてはおすすめしていません。

 

 

ビーンズショップを経営する以上、生豆の鑑定は基本となります。栽培、品種、精製を理解し、さらには輸送や保管と香味の関係までをきちんと理解する勉強をすべきでしょう。できれば生産地にもいくべきでしょう。
店をやりたいと思うの人が多いのは、今に始まったことではないのですが、目的が何か?は重要です。

 

 

日本でスペシャルティコーヒーを扱うビーンズショップも10年以上の歴史をきざみ、進化し成熟の過程にあると思います。優れた生豆も入手することが可能となってきました。
これからこの業界を背負っていく若い人たちには、トレンドという危うい言葉に惑わされず、コーヒーの香味の多様性という本質に目を向け、優れた品質が何かを追求し、その香味を広めてほしいと願います。