パパ日記

ペーパードリップ-5

私が初めてネルのコーヒーを飲んだのは、渋谷にあった「ロロ」という喫茶店でした。
20日の続き

 
自家焙煎していたのかは不明ですが、40年くらい前に話はさかのぼります。
渋谷西武百貨店のすぐ裏にあり、西武百貨店の輸入盤専門店(日本版が出ていなかったため)にロックのレコード(レコードの時代です)を買いに行ったときによく寄りました。

一時期イギリスのプログレッシブロックにはまっていました。
ピンクフロイド、イエス、エマーソンレイク&パーマーやムーデイーブルースなどですね。

 

 

この店は、ネルで抽出し、鍋で温めて出すスタイルで焙煎は深かったように記憶していますが、当時は焙煎の意味もあまり理解していませんでしたので曖昧な記憶です。
小さめの厚手の白磁のカップだったと思います。

 

 

当時はまだコーヒー専門店という業態があまりなかったころです。
この業態の先駆的なスタイルの店は三宮の茜屋さんあたりでしょうか?
ペーパードリップで、豆をたくさん使用しふくらまして抽出する方法でした。
この店はカウンターの後ろにコーヒーカップを飾り、通常の店の3倍くらいの高い価格で提供していました。後にこのスタイルはコーヒー店に大きな影響を与えました。

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当時はまだ、洋食器(カップ)の輸入が自由化されていない時代で、都内の百貨店にはまだ海外のコーヒーカップがなく、神戸の三宮まで探しに行き、帰りに茜屋に寄っていた時代です。思えば この当時からのカップコレクターですね。

 

 

 

この頃コーヒーは神戸の某ロースターから取り寄せて自宅で飲んでいました。
20代でまだ味などはよくわからない頃でしたが、自分なりに選別して購入はしていました。
当時としてはいいコーヒーでしたが、今となっては?ですね。

 

 

さてやっと本題に入れそうですね。
ネルの味はやはり濃縮感がありますので、浅いローストのコーヒーには向かないように思います。一般的には深いローストのコーヒーを使用し、苦みの中に甘みを表現しようとする場合が多いでしょう。

 

 

しかし、この苦みが曲者で、苦みの質は語られることがありませんでした。
苦みは、強弱や質があります。
ここで問題となるのはローストです。

 

 

焙煎を深くすれば焙煎機の中には煙が充満し、煙の味が付着しますので苦みがまします。
ダンパーで排気すれば煙はある程度は抜けるのですが、(20年以上前の小型焙煎機排気能力が乏しく排気性能がよくなかった)操作の仕方によっては煙りの香味に支配されます。

 

 

ローストする人によっても苦みの感じ方は異なりますので、消費者がその好みを選択すればいいのですが、一般的にはスモーキーな香味は心地よくはないでしょう。
多くの場合この苦みを和らげる素材としてネルが選択されてきたといういい方もできるかもしれません。

 

 

また、ローストが深くなれば豆に熱が加わりますので、火力が強すぎたり長くローストすれば豆の中も表面も焦げますので、苦みが増します。
この焦げたような苦みも感じ方に個人差がありますが、一般的には刺激的であれば心地よくはないでしょう。

 

 

これらの問題は、焙煎を浅くすれば解決しますが、深いコーヒーを作りたいわけですからどうすればよいでしょう?
一つは排気を自在にコントロールできるような焙煎機の性能が重要となります。
二つ目は深いローストに耐え、香味が壊れないよい生豆が重要となります。

 

 

一つ目の問題は、直火の焙煎機ではなく半熱風の焙煎機にすれば少しは解決しますが性能そのものの問題は残ります。
また焙煎機の性能を把握したうえでローストできるスキルも重要になるでしょう。
苦みのデリケートな感覚を理解できる味覚も問われるでしょう。

 

 

二つ目の問題はもっとも厄介で難しい問題となり、今でも十分に理解されているとは思えません。
生豆の品質や香味を理解するには膨大な体験が必要です。
初心者は経験が少ないためやむを得ないのですが、きちんと生豆の香味を理解すべきでしょう。浅いローストのコーヒーがスペシャルティなどというコーヒーそのもの本質の香味を理解していないようないい方がされるのも理解不足といえるでしょう。

続く