パパ日記

ワインとコーヒーと言葉の表現

ワインの言葉のようにコーヒーの言葉での表現のコンセンサスはとれてはいません。
たった15年前のスペシャルティコーヒーの革命期からまだ15年しか経過していませんし、コーヒーの香味を言葉で表現しようという試みも実質的には10年未満の歴史しかありません。
優れた特徴的な香味のコーヒーを飲んだことのあるコーヒー関係者もまだまだ少ないのですから、コーヒーの香味の表現はこれから少しづつ進化していくでしょう。

 

 

世の中かっこうをつけたかる人は多く、ワイン業界もコーヒー業界も同じようなものです。
ソムリエもコーヒー関係者も知ったかぶりは多いものです。
言葉が適切であるか否か?は何年も優れたコーヒーを体験して初めて理解できるものです。

 

 

よく「このハンバーグは肉じゅーがありすごくおいしい」などというお馬鹿なコメントがあります。
これなどは、和牛のサーロイン等を使用すれば1.000円では作れないので、安い肉か?オーージービーフに脂身を混ぜたか?豚肉の脂身が多く入っているか?としか推測できませんので、ジューシーという言葉はむしろ低級品で美味しくないということになるでしょう。
「このとんこつラーメンはさっぱりしている」とかもそのようなもので。
豚骨がさっぱりしているはずがありえないですね。

 
「このエチオピアはストロベリーですね」とか「ラズベリーのようとか」も怪しいですね。
日本人は柑橘の香味には強いですが、「ラズベリー」の香味はジャムでしか判別できません。
エチオピアの「ストロベリー」の香味はイルガチェフェのナチュラルの深いローストにまれに感じることができますが、何でもかんでもベリーはいかがなものかとも思います。

 

 

 

とはいうものの、香味を言葉で表現すことは重要です。
私はこのコトをワインで学習してきました。
コーヒーの香味を5感で受け止めた時に、それをその香味の感覚が潜在的な記憶の中にとどまる可能性もあれば忘れてしまう可能性もあります。
ある香味を思い起こすには言葉が必要で、言語化し、記憶の引き出しに入れておくことが重要となります。
数年後にこのケニアの「トマト」の香味は体験したことがあると理解できるでしょう。
そしてその言葉は他人と共有できるような客観的なものである必要もあります。
(ちなみに余談ですが、最近のケニアは「トマト」ケイの香味が多いですね。
残念ながら理由はわかりません。わかる人もいないでしょう。このあたりはテースティング会に来ればお教えします。」

 

 

言葉に転換することはコミュニケーションツールとして重要ですが、コーヒーはまだまだ発展途上といえるでしょう。カカオなどは発展途上以前でわかる人がほとんどない未開の状態だと思います。

 

 

今朝のコーヒー

今朝はマンデリン3種を飲みました。
すばらしいコーヒーです。
まずこのマンデリンでわかることはいくつかあります。

 

1.酸となめらかさがあり在来系の品種で、特殊なコーヒーであること。
2.一般的に流通している大部分の酸のないカチモール系の重いコーヒーではないこと。
3.クリーンな香味で新鮮が生豆であること。
4.酸の特徴はミディアムではレモンからオレンジ、シティではオレンジ、フレンチでは酸が抜け乾燥プラムや干しブドウのニュアンスに変わること。(但し、フレンチの香味は従来のものとは異なるので再確認したい。)
5.なめらかな触感は、ここ数年のマンデリンに比べ突出していいこと。
6.マンデリンの香味の経時変化を3段階に区分すると、第一段階の中盤から後半に向か位置の香味であること。(個人的な見解です)
7.これから香味が複雑に変化して楽しめること。
8.世界最高峰の素晴らしさで、他で体験することはなかなか難しいこと。

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スマトラ
島トバ湖

 

 

ミディアム
檜の香り、クリーンでレモン、オレンジの酸、心地よいなめらかな舌触り
シティ
杉の香り、クリーン、オレンジの酸、滑らか
フレンチ
ブラックチェリー、黒系の干しブドウ、乾燥プルーン、滑らか

 

 

 

第二段階に近づき第三段階に向かうとさまざまな複雑な香味が生まれてきます。
緑の芝の香り、青草、かすかにハーブ、多様な植物、そして第三段階の香味なると、ワインでいう「なめし皮」のニュアンスも生まれます。

 

 

なめし皮はブルゴーニュの赤ワインの熟成した香味を意味し、これはワイン業界ではコンセンサスがあります。この香味はフランスの優れたブルゴーニュに顕著で、アミノ酸系の味も伴います。
コーヒーでなめし皮は独特で在来系のマンデリンにしかありません。
この感覚がわかる人は世界中のコーヒー業界でもブルゴーニュ好きにしかわからないでしょう。

 

 

1年間このマンデリンを飲んでみてください。

きっと香味の違いが理解できると思います。
コーヒーの香味の複雑さを持つがゆえに、リントン地域の在来系品種のマンデリンはコーヒーの女王という称号を与えることができるのです。(何故女王から推測あれ)
4か月に1回でもいいのでお試しあれ。