パパ日記

フレンチローストの幅-3

焙煎で難しいのはフレンチローストなどの深い焙煎です。
ミディアムローストは、そこまでのプロセスとなりますので焙煎機の操作は比較的単純になりすが、フレンチローストはより複雑となります。

 

深い焙煎がなぜ難しさを簡単に言えば

高温で長い焙煎となりますので、豆の中に熱が入りすぎて焦げ(ベークド)たり
焙煎機の中に煙が充満し燻り臭(スモーキー)になるからです。
これらの好ましくない苦みを避け、かつ産地の香味を表現するには二つの観点から対処する必要があります。
 

 

一つは深い焙煎に耐えうる生豆が必要となります。
多くの場合標高が高い産地の酸とコクの十分で、新鮮で嵩密度が高い生豆ほうが向いています。しかし、このような生豆はスペシャルティコーヒーの中でも非常に少なく、地域、品種の特性も踏まえ、その判断には経験が必要となります。
 

 

ティピカよりブルボン、カツーラの方が深く焙煎できる傾向はありますが、香味が重くなりすぎてもよいとは言えず、ティピカでもよい香味を生み出す場合もあり、どの生豆をフレンチにするかは、やはりカッピングや経験で判断していくしかありません。

 

 
二つ目は焙煎機の性能です。
私がこの仕事を始めたころの小型焙煎機の性能はあまり良いとは言えず、深い焙煎には不向きでした。主には排気性能不足と火力不足が原因でしたので、当時はミディアムの焙煎中心で、ニュークロップは求められない傾向があり、しわの伸びやすい柔らかな生豆が求められました。

 

 
その的な豆の見本が繊維質が柔らかくかつ酸味の少ないブルーマウンテンだった訳です。逆にケニアのように固く酸の強い豆は避けられ日本入港はほとんどありませんでした。
コロンビア・ポパヤンやグァテマラ・アンティグアなどのニュークロップも豆質が固く、小型の焙煎機では焙煎が厄介でダブル焙煎などという技法が一部で試されたりした訳です。

 

 

 

私は深い焙煎を志向していましたので、酸とコクの十分なニュークロップを求め、焙煎機を改良し、火力と排気を調整しました。
今の焙煎機はそこまでする必要はないでしょうが、逆に排気がよくなりすぎる傾向にあり、香味を作り出すという作業がしにくくなってきていると感じます。

特に外国製の小型焙煎機に顕著にみられる傾向で、これらは焙煎機の細かな操作をあまりしないことを前提としているように設計されているように感じます。
 

 

焙煎は火力、排気その焙煎工程で特徴的な香味を生み出します。
基本は色、ハゼ音、臭い、味などの五感を駆使して行うもので、その補助として焙煎及び排気温度計やガス圧計などがあります。
操作により香味をコントロールできるのが良い焙煎機といえます。
したがって、どのような焙煎度合いのコーヒーを作りたいかによって焙煎機の選択が必要になります。
 

 

また、極めて重要な問題としてダクトの設置も排気に大きな影響も与えますので、これもどのようなコーヒーを作りたいかにより考えた方が良いでしょう。
しかし、ダクトの設置には煙やにおいの外部環境への影響もあり、好むようにつけられるとは限りません。
 

 
これまで数十台の小型焙煎機を異なる設置場所で試しましたが、香味は一様にはなりません。
昨日もローストトレーニングに行きました。
限られた時間で
焙煎機の設置に問題がないかを確認し

次に釜の特性をできるだけ早く把握し

生豆の個性を極力表現できる方法を探しますので
かなり厄介な仕事で、コーチングにも経験が必要となります。
 

 

 

焙煎したての香味で判断できる場合もあれば、酸やコクの強弱など2~3日香味の変化を見た方がよい場合もあり難しい作業となりますが、初期プログラム設定はします。

焙煎者は、火力や排気の操作をどのようにすればよいのかの基本がわかれば、あとは自分でさまざまな方法を試してその香味を判断すればよいということになります。
素材である生豆の品質が優れていますので、汎用品を使用するような試行錯誤や堂々巡りはしないで済むはずです。

 

 
したがって、その香味の判断のためにカッピングスキルが必要で、多くのよい品質のコーヒーの香味の体験が必要となります。
「香味が理解できずに焙煎は無理」ということをわからずに開業してしまうことが多い業界ですので、能書きという情報のみが巷に氾濫してしまうようになっているとも感じ、危惧しています。