パパ日記

きれいなコーヒー-2

「コーヒーとワインの香味はクリーンなほうが良い」というのが個人的な見解です。

生豆の品質で欠点が少ないものの方がクリーンであることは説明しました。
しかし、生豆そのものの特質として品種や生産地によりそのクリーンさは変わります。
またこのクリーンという感覚も個人的な受け止め方で、他の方にはわかりにくいかもしれません。
(精製方法や乾燥方法でも変わるかもしれませんがこの説明はとても難しいですので省きます)

 

 
この感覚を理解するには、コーヒーの基本の香味を知る必要があります。
コーヒーは2つの香味の系統があり、それはティピカとブルボンです。
まずティピカの天日乾燥の香味をきちんと理解し、その上で他のコーヒーと比較してみると香味はわかりやすいといえるでしょう。

現在のティピカは、カリブ海のマルティニーク島で栽培された苗木がジャマイカ、中南米に流れ、グァテマラからハワイ島、ジャマイカからパプアニューギニアなどに移植されています。
現在の主な産地は、ジャマイカ(現在さび病で減産)、ハワイ(現在害虫で減産)、PNG、東チモールなどで、それ以外には見ることは少なくなりました。
例外的に南米のコロンビア、ペルーなどにも残っていますが流通は極端に少ない状態です。

したがって、この基本形の香味を理解しないで、果実感のあるコーヒーがいいという風潮には疑義を感じます。

 

 
今から20年程前に各生産地のティピカの香味の特徴を「コーヒーと文化」に書いたことがありますが、今ではその当時の香味を体験することは難しくなっています。
業害虫に弱く、生産性も少ないため、絶滅種になりつつありますので、その香味を今こそきちんと確認し後世に伝えるべきと考えますので、私はティピカにこだわりを持っています。
東チモールにこだわった理由もそこにあります。

 

 
しかし、病害虫や気象変動のなかでこの品種の栽培維持は、非効率で生産者に負担が大きいものです。したがって、消費国がそれに見合う価格を受け入れることができればこの品種が少しは残るかもしれません。

 

 

この品種の基本の香味は、クリーンさにあります。

「澄んだ、さわやかな、心地よい、軽やかな」というような言葉が似合うコーヒーです。
この香味は自己主張が強いわけではなく、むしろ控えめで、落ち着いたものです。
柔らかな柑橘系の酸味、なめらかな舌触りなどということもできます。
今では体験が難しいと思いますが最高峰のブルマンなどはシルキーでしたし、よいハワイコナにはしっかりしたコクさえあります。

 

 

ワインの品種でいえばブルゴーニュのピノ・ノワールのようなデリケートな香味といえるでしょう。

 

 

但し、にごり感が入ることも、又産地によっては青い草の香味を感じることもあります。
ハワイコナを除き、多くのティピカ産地は、粗放栽培で、その本当の良さを理解しにくいコーヒーともいえます。
肥料を与え、ある程度管理すれば現在の香味よりはるかに優れたものが生まれるでしょう。

 

 

このティピカの酸とコク、そしてクリーンな感覚を基準として、他のコーヒーを比較するとコーヒーの香味が少し理解しやすくなります。
堀口珈琲で扱う東チモールやコロンビアの中にティピカもありますので販売されてた時に品種をチェックしてみてください。