パパ日記

BRAZILとCOLOMBIA

ブラジルは生産量が多いため、収穫から精製、乾燥工程で細かな手間をかけることが難しい産地です。現地でのハンドピックは難しく、比重や電子選別の徹底をしても未熟豆等は混ざります。
したがって、堀口珈琲ではさらに電子選別機にかけ、ハンドピックをするなど多くの労力をかけています。
これらの手間は1日の焙煎量をかなり制約しますし、不要な豆の処分量を増やします。
ここまでできる会社は世界的に見てもあまりないとおもいます。

 

 

さて私のイメージする理想のブラジルの香味というものがあります。
それは、「フレンチローストにしても、滑らかで柔らかく、かつミルクチョコレートのような濃縮感のあるコーヒー」といったイメージです。
「そんなのブラジルにあるじゃないか」
もしくは「ほかの国のコーヒーにあるじゃないか」
といわれる方もあるかもしれませんが、個人的にはいまだ香味に物足りなさ、品質の不安定さを感じています。勿論一部に安定した品質のブラジルもあるのですが、さらなるブラジルらしい特殊な香味を追い求めています。

 

 

この感覚は、長い間体験したブラジルコーヒーの中から少しずつ蓄積されたもので、言葉で説明するのはなかなか困難です。
それらに遭遇するまでどれほどの根気が必要なのか?はわかりません。
しかし、いつしか現在よりも優れたブラジルが生まれることを信じていませんと香味の追求は停滞してしまいます。

 

 

スペシャルティコーヒーを扱う中で、ブラジルを購入する必要があるのか?と悩むこともありました。
多くのコーヒー関係者は無条件に、もしくは無意識にブラジルを必要としているように感じます。
おそらく、日本でコーヒーを飲みながら育てば、一番使用量の多いブラジルの香味が無意識に刷り込まれ、独特の苦み風味の体験値がそうさせるのかもしれません。
世界最大の生産国であるというブラジルという言葉の持つ魔力のようなものかもしれません。
(少なくともカッピングセミナーではブラジルとコロンビアの香味の違いは記憶して帰っていただいています。)

 

 

ブラジルと同じように世界第3位の生産国であるコロンビアは、世界でも極めて優れたテロワーがあり、最高峰のコーヒーが作られるだろうと開業時から信じてきました。
しかし、実際には1990年代の10年間品質の不安定さに直面し、2000年代は産地の開発にとりくみつつ、幾多の試行錯誤をしてきました。
2000年後半あたりからコロンビア南部産地でも徐々に品質向上が見られるようになり、20年以上かかり、現在では素晴らしいコーヒーを確保することができるようになりました。

 

 

 

優れたコーヒーは、いきなり誕生し流通したわけではなく、生産者とエクスポーター、インポーターとロースターの相互関係の蓄積の中で生まれてきたものです。
あたかも子供を育てるようにです。
その間のコーヒー関係者の品質に対する意識変化が、新しい価値を生み出して、今に至っているということを若いコーヒー従事者は知るべきだと思います。

 
スペシャルティコーヒーの生豆流通の歴史はたった15年程度しかありませんので、人間に例えれば15歳くらいかもしれません。
まだまだ成長の余地はあり、25歳くらいにはどのようになるのだろうかと推測もします。