パパ日記

嗜好飲料

果実で最も酸の強いものはレモンでしょうか?pH2程度です。
pHが1違うと酸の強さで10倍ちがいますので誰でもわかるはずです。
ミディアムローストのコーヒーのpHは4.7と5.2の間くらいですので、0.5違いますから、多くの人は官能的に違いを判断できます。
0.2程度の違いですとプロでないと判別は困難だと感じています。

 

 

 

ケニアは、最も酸の強いコーヒーとして世界的に認知されていますが、これに匹敵する酸はコロンビアのナリーニョやスマトラのマンデリンなどの中に見つけることができます。
対してブラジルの酸は弱めで、pH5.0から5.1程度のものが多く、その違いを一般の方でも理解できると思います。
しかし、酸味は液体の溶けている水素イオン濃度(pH)という強弱のみでは判断できませんので、他にも酸量や組成にも左右されます。

 

 

 

コーラも酸が強くpH2.5程度で、ワインは3.5、ビールgは4.5でコーヒーはミディアムローストで5程度が標準で弱酸性です。酸の弱いチョコレートは6程度で、ペットボトルの生茶は6.5程度です。
嗜好飲料は、基本的には酸性のものが主体で、基本的には脂質がありません。
脂質があるのはコーヒーの15%程度とチョコレートの50%程度くらいですが、チョコレートは酸が極めて弱くなります。

そうするとコーヒーは酸と脂質のバランスが良い特殊な嗜好品ということになります。

 

 

 

 

さらに、コーヒー飲用の習慣性のベースとなるものにカフェインがあります。
カフェインは、薬物としての規制がありませんので、エナジードリンクやカフェインの錠剤などが販売されています。
「カフェインの真実」のマリー・カーペンターは、標準カフェイン量(SCAD)という尺度を考案し、1SCADはカフェイン75mg相当とし、エスプレッソ1杯、150mlのコーヒー一杯、250mlのレッドブル1缶としています。
彼の摂取量は1日5SCADらしいです。

 

 

 

カフェインの薬理作用は個人差がありますので、適量は人によります。
私は1日に2~3杯のコーヒー300~450mlを飲みますので140~225mg程度のカフェインを摂取していることになります。1日3~5杯程度のコーヒーを飲むことには問題はないと思いますが、飲みすぎは注意が必要かもしれません。
カフェインよりもおいしいコーヒーを楽しみながら飲むことの方が精神的な健康をもたらしてくれると思います。

 

 

 

さらに嗜好性のもとになる成分を付け加えるならば、蔗糖とアミノ酸のメイラード反応による褐色物質(メラノイジン)の苦味やアミノ酸のかすかな旨味もあります。それらが、複雑な風味を生み出しています。

 

 

 

苦味に対して、日本人はデリケートな感覚を持っていますので、欧米人とは感性が異なると思います。
日本の春の主な味は苦味で、ぜんまいやフキノトウ、タケノなど様々です。
日本人は海産物の肝の苦味も大好きですね。
コーヒーのアルカロイド類は、カフェインですが、たばこのニコチンもあります。
柑橘系の苦味のリモニン、グレープフルーツのナリンジンなど苦み物質は多くあります。
苦味は毒に通じますので、あらゆる味の中で人間の感じやすい味になっています。
その苦味を珈琲で楽しもうというのですから、コーヒー好きの味覚はしっかりしていると思います。
イタリア人はエスプレッソを飲みますが砂糖を入れますし、スターバックスの苦いコーヒーは多くの場合ミルクが入ります。
フレンチローストのコーヒーに砂糖を入れないのは、日本人が最も多いでしょう。(もちろん入れてもよいのですよ)
コーヒー好きは苦味の中に甘味さえも感じるのですから……。

 

 

 

コーヒーの苦味は、現状のSCAA,SCAJの官能評価にはありませんが、今後は評価項目に入れてもよいとは思います。

「やさしい、やわらかい、心地よいしっかりした、強い、刺激的な、焦げた、煙りっぽい」苦味まで幅広い表現が可能です。焙煎が深くなるにつれ苦味は増しますが、よい苦味の為には、まずは生豆の選択が重要で、焙煎機の性能や焙煎のスキルが問われる領域になりますので、浅い焙煎に比べると焙煎力の差が風味に大きく影響するでしょう。
 

 

生豆に含まれる7~8%程度のショ糖や2%程度のアミノ酸は、焙煎後その成分はなくなりますが、熱反応で褐色色素になり旨味や甘味を生じさせます。ショ糖のみであればカラメル化して甘味を生じさせますが、そのあたりのメカニズムはよくわかりません。にも拘わらず、それを感じさせてしまうのがコーヒーの魔力だともいえると思います。

 
しかし、コーヒーの甘味の強度、差異までとらえる研ぎ澄まされた味覚の持ち主は多くはないでしょう。
官能的に舌でとらえることの難しさゆえに、SCAAのカッピングフォームでは甘味の有無のみを問うているのだと思います。味覚テストの甘味は、蒸留水1リットルにショ糖4gの甘みを識別できるかをテストしますが、水よりは甘いという感覚くらいでしょう。このくらいの甘味はコーヒーにも含まれていると思いますが、他の味に隠れていることも多いでしょうから、ちょっと探しながらコーヒーを飲んでみるのもよいでしょう。

 

 

コーヒーの風味は、他の嗜好飲料よりもはるかに複雑ですね。