パパ日記

賞味期限3 ワインとコーヒー2

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コーヒーセミナー
11月のセミナーは近々にアップします。

ワイナリーの醸造担当者は、日々、醸造中のマスト(若いワインや搾りかす)中の}
度、pH、総酸量などを分析し、発酵をチェックしていると思います。
官能的チェックの場合もあるかもしれません。

 

完成したワインは瓶詰めされ、瓶内熟成していきます。
5年程度の期間の保存を想定すると、①すでに飲み頃を逸したもの、②飲みごろに達したもの、}③熟成途上のものなどに区分され、①から③に向うほど品質はよくなり、価格は上昇します。

一般流通のワインに比べ、少量で少し特殊なワインになります。
コーヒーでいえば、3極化されたSPの最上位に該当するものといえるかもしれません。

ワインの風味は、グルタミン酸の旨味に酒石酸の酸味とエチルアルコールの濃度と糖類などによる複合的で複雑なものといえます。これらに香りが加わります。
これらの熟成の風味の飲みごろは、多種のワインの飲用経験から導きされるものです。
コーヒーも同じで、10~20年のスパンで体験してきた経験値から3極化の最上位を判断できるようになります。

ブルゴーニュの最高峰DRC(ドメーヌ・ド・ロマネコンティ)のワインは、ほぼグルタミン酸系の旨味です。私が20年間保管しているグロフィエの特級畑であるボンヌ・マール2000年は、熟成したアミノ酸類の味が想像できます。
あと10年くらいは保管でき、それを過ぎるとボディが弱まると推測します。

この風味を体験してしまうと、ブルゴーニュワインの深淵に身をゆだねることになります。
新たにリリースされた優れたワインであればあるほど、飲みごろは先になりますので自分で寝かすしかありません。
2000年のブルゴーニュは、20年間保管したご褒美として私個人の孤高の悦楽になります。

 

 

ワインを購入し、抜栓したら、劣化しているか否かを判断する必要があります。
保存状態のよいものは、クリーンです。透明度が高く濁りがありません。
対して状態のよくないものは酸化臭や濁り感があります。

このクリーン差の判断のために、同じワインで①保存方法の異なるもの、②輸入商社がことなるもの、③あたま切りをしたもの(上部の30mlを除く)、④2時間目に抜栓したもの、⑤デカンタしたものなどのテースティングをかなり行いました。

このクリーンの感覚は、20年以上前に故太田さん(輸入商社シュバリエのオーナー)に鍛えられました。当時のワインの大部分は、リーファーコンテナが使用されていませんでしたので、クリーンさに欠け、フレンチ及びイタリアレストランで飲むワインの多くは微妙に劣化していました。初めてクリーンなワインを飲んだ時の衝撃は大きく、コーヒーも同じだと痛感しました。

その昔、タイユバン・ロブション(2004年閉店、現在はジョエル・ロブション)で劣化しているとソムリエにお伝えしたこともありますが、それ以降はそんなものだと割り切り、高いワインは注文しなくなりました。
その当時から、20年以上たち、さすがにワイン業界も輸送や保存に神経を使うようになりましたので、現在は20年前に比べワインの状態は格段に良くなっています。

20年前は、コーヒーも、生豆の品質追求は少なく、SPという概念は乏しかった時期ですので、ワインと同じ経緯をたどってきたなと思います。

熟成ワインに限定すれば、同じセラーに保管し、入港時、5年後、10年後、20年後のケミカルデータと官能評価の相関がとれるかもしれません。しかし、そんな研究は、誰もしないでしょう。

コーヒー生豆では、入港時と、半年後、1年後のケミカルデータと官能評価の相関性については、私が検証しています。
後日書きますので、「生豆の賞味期限」でご確認ください。

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堀口俊英(ほりぐちとしひで)
2002 年堀口珈琲研究所設立
2019年東京農業大学・環境共生学博士課程卒業
著作:「The Study of Coffee」新星出版・2020年その他
論文:「有機酸と脂質の含有量および脂質の劣化はスペシャルティコーヒーの品質に影響を及ぼす」日本食品保蔵科学会 2018
論文:「コーヒー生豆の流通過程における梱包、輸送、保管方法の違いが品質変化に及ぼす影響」日本食品穂応科学会 2019
論文:「コーヒー生豆の品質基準に関する研究」の本食品科学工学会 2021