産地のはなし

ブラジル「マカウバ・デ・シーマ農園」リモート取材レポート ‐高品質と安定性を支える背景に迫る‐

ブラジル「マカウバ・デ・シーマ農園」リモート取材レポート  ‐高品質と安定性を支える背景に迫る‐

 

こんにちは。EC事業部の小野寺です。

堀口珈琲のオンラインストアでは現在、良質なブラジル産コーヒーを順番にご紹介していく通年企画「Viva!Brazil!‐ブラジルの魅力、再発見!‐」を実施しています。

企画の第一弾として現在販売しているのは「マカウバ・デ・シーマ農園」のコーヒー。
堀口珈琲にとって最古参のパートナー生産者であり、その付き合いはもう20年以上に及びます。

今回の特集を実施するにあたり、農園主のグラウシオさんにリモートで取材をさせていただきました。オンラインストアの特集ページではお伝えしきれなかった内容を、こちらでさらに詳しくお届けしたいと思います。

農園の紹介からおいしさの背景まで、加えて他の農園とは違う独特な農法も!?
さらにはグラウシオさんから皆様へ向けてメッセージ動画もいただきました!
ぜひ最後までお楽しみください!

 

1.マカウバ・デ・シーマ農園について


 

 

ブラジルの南東部に位置するミナスジェライス州。世界最大の生産量を誇るブラジルにおいて、その総生産量の約半分を占めるほどの一大コーヒー生産エリアです。このミナスジェライス州のセラード地区に「マカウバ・デ・シーマ農園」はあります。

 

 

セラード地区におけるコーヒー生産は、日本とも所縁があります。1979年、ブラジル政府と共同でセラード地区の土地開発プロジェクトを進めたのは日本のJICAでした。やせた土壌のセラード地区を開発するにあたり、日本の土壌開発技術が注目されたそうです。この開発事業に伴い、多くの日系移民たちが活躍しました。

 

 

こちらが農園主のグラウシオさん。堀口珈琲最古参のパートナー生産者です。クリーンなブラジル産コーヒーを20年以上に渡って供給し続けてくれています。グラウシオさんのコーヒーは当店のシングルオリジンにおいて絶大な人気を誇ります。

 

 

農地の様子です。総面積505haで、コーヒー栽培面積は312ha。ヘクタールだとピンとこないかもしれませんので東京ドームで換算すると、総面積は東京ドーム約109個分です。この広大な農地の一角に堀口珈琲専用の区画があり、そこでは私たちの要望に応えてブルボン品種を栽培してくれています。

 

 

2.農園主グラウシオさんはこんな人‐品質を追求し続ける生産者‐


 

 

<グラウシオさんのおいたち>

 

1969生まれのグラウシオさんは1987年、18歳の時に父親からマカウバ・デ・シーマ農園を受け継ぎました。コーヒー生産歴35年以上のベテラン生産者です。

グラウシオさんの父アントニオさんは自動車学校や金融業、建設業など様々な分野で起業して生計を立てていましたが、1978年に姉夫婦からサンパウロ州モジアナ地区にあるコーヒー農園を分割譲渡されたことをきっかけに、コーヒー栽培に本腰を入れ始めます。

譲り受けた農地内にあった古い小屋を改築するために瓦が必要で、アントニオさんが瓦を入手するために訪れたのが瓦の優良産地であったミナスジェライス州セラード地区。そこでコーヒーの生産が盛んに行われていることを知ったアントニオさんはセラード地区でのコーヒー生産に可能性を感じ、1980年に「マカウバ・デ・シーマ農園」を購入しました。

 

 

このとき、アントニオさんは4箇所に農園を保有しており、多忙を極めていたそう。そんな父親の姿を見ていたグラウシオさんは「自分が手伝わなければ」と決意し、1987年、高校を卒業した18歳の時に「マカウバ・デ・シーマ農園」を父から受け継ぎました。

 

 

<品質を追求する姿勢>

 

18歳で農園を受け継いだグラウシオさん。当時をこう振り返ります。

 

「多忙だった父親は経営に関して細かい部分まで管理が行き届いていなかったので、自分はしっかり管理をしようと考えました。農地を数区画にわけ、肥料・農薬の量やトラクターの数、生産量をノートに記録してコスト管理を始めたのが私の最初の仕事です。」

 

18歳にしてこの几帳面さ。グラウシオさん、さすがです。

 

農園を管理するにあたっては農業に関する知識は必須です。グラウシオさんは農園を受け継いだ当初、まずは農園に来ていた農業技師に同行して実地で学びます。その後、コーヒー栽培に関係するセミナーに参加して知識面を増強、さらには大学院の講座にも一般参加し、コーヒー栽培、農園管理、経営などの講義も受講しました。

「当時から良いコーヒーを作りたいと考えていました。セラード地区のコーヒー生産者として良い品質のものをつくりたいという気持ちは、自分の本心です」

こういった真面目な姿勢、品質に対する追求心が、堀口珈琲のパートナー生産者として20年以上に渡り高品質なコーヒーを安定的に届けてくれている所以なのだと実感します。 

 

 

 

3.高品質なコーヒーを生み出すための取り組み


 

ここからはグラウシオさんの具体的な取り組みについて、今回取材した内容をご紹介していきます。

 

<土壌改良>

 

どうすれば良いコーヒーができるのか。グラウシオさんは知識と経験を積む中で、コーヒーの木にしっかりと栄養分が行き渡らなければコーヒーはおいしくならない、つまり土壌の重要性を実感し、施肥による土壌改良に取り組みます。

 

 

元々、セラードは土壌が痩せ気味なため肥料が必須です。まずは窒素を与えるためにアンモニウムを撒きましたが、酸化が激しいので硝酸塩に変更。すると酸化が穏やかになり土壌の活性化に繋がります。さらには、パルプ(精製の過程で除去したコーヒーチェリーの果皮や果肉)を利用した有機肥料も活用し、少しずつ土壌改良を行っていきました。

 

<雑草の有効利用>

 

上述した施肥に加えて、土壌改良のために近年実施している取り組みとして「雑草の活用」を挙げられていました。

 

 

通常、農地の雑草対策として除草剤を撒くことが一般的ですが、マカウバ・デ・シーマ農園ではあえて雑草の種を蒔き、肥料を与えて育てているそうです。これにより、以下のような効果が望めるといいます。

・土壌が柔らかくなり、コーヒーの木の根の伸長が促進される
・根からの土中成分の吸収量が多くなり、チェリーに養分が行き渡りやすくなる
・雑草がコーヒーの木にとっての害虫の天敵となる虫の住処となり、農薬の使用も低減できる
・一定程度育った雑草は刈り取って有機肥料として活用できる

最初は「なぜ雑草を?!」と驚きましたが、サステナブルかつ有効な方法であると感じました。この方法をセラード地区で初めて取り入れたのがグラウシオさんで、今では約2割の農家がこの方法を採用しているそうです。

 

 

<灌漑設備の活用>

 

広大な敷地でコーヒー栽培をしているマカウバ・デ・シーマ農園では生産量と品質の安定のために灌漑設備(長い管に水を通し、農地に水を撒く機械)を導入しています。特にここ数年は気候変動の影響からか雨が降らない期間が長期化しており、この干ばつの影響を避けるためにも灌漑設備が必要です。

 

さらには、いつ、どのくらい水を撒くのかの判断も重要になってきます。マカウバ・デ・シーマ農園では農業技師の助言により、水をまくタイミングと量を細かくコントルールしています。2021年6月にブラジルで大規模な霜害が発生しコーヒー生産量が著しく減少しましたが、マカウバ・デ・シーマ農園では灌漑設備によって水を撒く量をうまくコントロールできたからこそ、霜による被害を最低限に抑えられたとも語っていました。

 

 

<ドライミルにおける選別の高精度化>

 

農地で収穫されたコーヒーチェリーは農園内のウェットミルで被覆物の除去と乾燥が施されたのち、ドライミルへ運ばれて脱殻、選別がおこなわれます。私たちがオンラインストアで商品紹介をする際、農地での取り組みやウェットミル工程に比べると、生産者の手を離れたドライミル工程を紹介することは少ないのですが、コーヒーの品質に影響を及ぼす大事な工程です。

 

 

なぜここでドライミルについてご紹介するかといえば、グラウシオさんがセラード地区のドライミルの管理等を行う組合の会長を務められているからです。2020年に会長に就任したグラウシオさんは、スペシャルティコーヒーの生産ラインの強化に取り組みました。その理由をこう語ります。

「スペシャルティコーヒーの量と質の向上のためには、ただ生産者が頑張るだけでなく、ドライミルの強化は必須。スペシャルティコーヒーの専用ラインを作るべく、新しい投資をすべきだと思い、自分が動きました。」

グラウシオさんは1台しかなかった比重選別機を7台に増やし、処理能力を向上させます。また、ただ単に機械を増やすだけではなく、機械オペレーターへの教育など人的な面でも強化を図りました(これが一番大変だったそうです)。

 

 

 

これにより生産量と選別のクオリティが飛躍的に向上します。実はここ数年、私たちがマカウバ・デ・シーマ農園から買い付けをする生豆の量が増えていたのですが、背景の一つにはドライミルにおける処理能力と精度の向上がありました。

グラウシオさんからみなさんへのメッセージ


 

 

コーヒー生産を始めた当初からいまもなお、品質向上のために新しいことにチャレンジし続けている真面目な情熱家、グラウシオさん。その姿勢こそが、高品質かつ安定的なコーヒー生産を支えているのだなと、今回の取材を通じて実感しました。

取材の最後にこんなことを語ってくれました。

「農園で新しい手法を試そうとするとき、それはすべてコーヒーの品質向上のためです。今後もよりおいしいと思ってもらえるコーヒー生産に励んでいきたい。もう一杯飲みたいと思ってもらえるようなコーヒーを届けたい。そう思っています」

 

「堀口珈琲の品質と味わいを大切にする哲学にはとても共感しています。かつて日本に行って堀口珈琲の店舗を訪問したとき、店頭に自分の写真が飾ってあって、目の前で自分のコーヒーをお客さんが買ってくれたことがありました。これは忘れられない想い出です。また日本に行きたいですね。」

 

 

 

日本時間の夜20時から始まったリモート取材は盛り上がり、終了したのはもうすぐ日付が変わろうかという頃でしたが、グラウシオさんのコーヒーへの情熱に胸を打たれ、私の背筋はシャキッと伸びていました。マカウバ・デ・シーマ農園のコーヒーを皆さまへお届けするとともに、そのおいしさの背景もしっかりとお伝えしなければという使命感に燃えつつ布団に入りました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
オンラインストにて販売中の「マカウバ・デ・シーマ農園」のコーヒー、ぜひお試しください。
>>オンラインストア特集ページへ

 

【グラウシオさんから皆様へのビデオメッセージ】

 

 

>>オンラインストア特集ページへ