パパ日記

ペーパドリップ-1

世界的にペーパードリップへの関心が強まってきています。

 

 

日本では当たり前に行われていた抽出方法が、世界的にひろまりつつあります。
ブルーボトルはよく日本に来て、ドリッパー、サイフォン、水出しなどの器具を購入しサンフランシスコの店でいち早く試していました。
数年前堀口珈琲にもふらりと来たことがあり、その時はネルの抽出をみせてあげました。
彼も最終的にはペーパードリップに香味のよさや利便性を見出したのだと思います。

 

 

 

その背景にあるのは、スペシャルティコーヒーを味わうには抽出方法が重要との認識が深まり、エスプレッソ以外の抽出が模索されたことにあるともいえるでしょう。
レギュラーコーヒーの抽出は、業務用コーヒーメーカーでの大量抽出からシングルサーブ(一杯どり)の方向に流れていくのは当然と言えば当然でした。

 

 

シカゴのインテリジェンシアなどは、当初グローバーという一杯抽出のマシンを使用してましたが、マシン会社がスターバックに買収されたため、メンテナンスの不安からその使用をあきらめ、ハリオのペーパードリップに移行していきました。
ポートランドのマイクロロースターのコーバがケメックス用に開発したコーン(金属製の円錐ドリッパー)なども使用されています。抽出方法の模索がされています。

 

 

 

米国のスペシャルティコーヒーマーケットで、ペーパードリップの浸透は急速でした。
2010年のアナハイムのSCAAの展示会などを見る限り、それはまさしくペーパードリップ革命といっていいくらいの広がりに感じました。
そして、2014年のシアトルの展示会ではペーパードリップは当たり前のような印象でした。
その後、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどのコーヒー店も関心を持つようになり広がっていきました。
当時の米国ではペーパードリップに関心を示すコーヒー関係者はいなかったことを考えると、現在は、1990年代のシアトルにおいて普及したエスプレッソに代わる第2次抽出革命といえるかもしれません。

 

 

さてこの抽出方法なのですが、何が正しいのでしょう?
答えは簡単ではありません。

 

 

米国では昔からペーパーに粉を入れ湯を注ぎ、かき回すようなことをしていました。
10年以上前のSCAAの展示会でロイヤルコーヒー(生豆のトレーダー)のブースでそのような抽出がされていましたので、米国ではそのような方法が一つの基準として潜在化していたかもしれません。このような米国における抽出方法は、日本人から見ると奇異に感じるかもしれませんが、この方法がダメとも言いきれません。
結果は香味で判断しなければなりません。

 

 

 

しかし、日本ではドリップの歴史は長く、ペーパードリップは試行錯誤されてきました。
少なくとも抽出理論として、浸漬法と透過法の2種があることは業界では当たり前のことでした。
浸漬とは粉と湯が接触されることでコーヒーの成分を溶解します。フレンチプレスなどが代表的な器具で、抽出時間を決めやすく安定した香味が出せます。
透過法とはドリップのことで、コーヒーの成分を溶解し浸出させることですが、この方法は以外に難しく、多様な方法論を生み出してきました。
ドリッパーも様々な形状が生まれ、店によって抽出方法は多様になり、何が正しい方法なのかわからなくなってしまいました。

 

 

 

極端に言えば、100店あると100店違うコーヒーの淹れ方をするようになり、器具メーカーが考える「適切な抽出方法」は、具体的には説明しないようになってきていると感じます。
以前本を出版する際に、メーカに取材をしましたが「みなさんさまざまな淹れ方をしていますので…..」と正式なコメントはもらえませんでした。

 

 

 

別の見方をすれば、日本における抽出の多様性やそのこだわりは、香味の差別化を抽出でしかできない時代の産物といえるかもしれません。
私がこの仕事を始めた時には、あまりに多様な抽出がなされ、みなそれをおいしいコーヒーを生み出す魔法の方法であるかのように信じている不思議な世界でした。

続く