パパ日記

ハニー

緩くかかわっているコミュニティがいくつかあり、その中の年ワイン会に参加。
この時期ですのでボジョレーヌーボーを2種、その他。
最後は「呑兵衛向け」というかデザートワインと蒸留酒のフィーニュ(fine)
酒に弱い私は酔いが回りワインで終了してしまいました。

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変わった白ワインが一つありましたので真面目にテースティング。
CHATEAUNEUF-DU-PAPE2011(シャトード・ボーカステル)
酸が弱く第一印象が蜂蜜やメープルの甘み、バニラやアーモンドの香り、ベルベットのようになめらかに舌に絡むボディ感がある。まさにハニーっぽいワインでした。

 

コーヒーも最近ハニーコーヒーと呼ばれるものもあります。
チェーリーから生豆にするまでの工程にはさまざまな方法があります。
チェリーの果肉をとると生豆の外側に内果皮(パーチメント)があり、その表面をゴム状のぬめりが覆っています。ミューシレージというのですがこれは糖質で、これを水槽(水を張る場合と張らない場合がある)で自然発酵させ、その後水で洗い天日などで乾燥するのがウオッシュトです。ミューシレージのついたままのパーチメントを天日乾燥するのがパルプドナチュラルという方法です。

 

 

 

この方法は初めにブラジルで行われました。
ブラジルでは大規模農園が多く、機械収穫や枝からチェリーや葉をしごいたりして収穫し、チェリーのまま乾燥します。この方法をナチュラル(アンウオッシュト)と呼びますが、未熟豆や過完熟豆の混入が多くなり、品質にムラが出やすくなります。

 

 

 

そこで考えられたのがパルプドナチュラル(PN)という方法で、チェリーを水槽に入れその熟度で選別します。過完熟のチェリーは浮き、完熟と未熟豆は沈みます。
沈んだ完熟と未熟豆を果肉除去機にかけ選別します。
完熟したチェリーはやわらかく、未熟は硬いのでうまく分けることができるわけです。
未熟豆の混入が少なくなるので、全体的な品質は向上します。
しかし、果肉除去機や水を多く必要としますので、ブラジルのすべてがこの方法で行われるわけではなく、伝統的なナチュラルの精製方法の方が多くあります。

 

 

 

PNが普及するにつれ、何となく「コーヒーが甘くなるのでは」ととらえられるようになりました。
ミューシレージがついたまま乾燥しますので、何らかの味がつくのではないかということでしょう。ウオッシュトとパルプドナチュラルの香味の違いは科学的に分析しえないでしょうし、官能的な評価もむずかしいと思います。
コーヒーは、土壌などテロワールや品種が香味に与える影響も大きく、ウオッシュトとパルプドナチュラルの香味の違いを語るのは難しいのですが、テースターとしては何らかの香味の違いを説明したいとは考えます。

 

 

このブラジルのPNは、スペシャルティーコーヒーのムーブメントの最中、2005年前後からでしょうか?コスタリカで見られるようになりました。
当時のコスタリカでは、農協の大量生産システムから少量生産へのニーズが高まり、マイクロミルが生まれ、その中で実験されました。
小農家や農園の一部は、チェリーを農協の巨大なミルに運ぶのではなく、自ら果肉除去と乾燥を行いコーヒーに付加価値をつけようとしたのだと思います。

 

 

ブルマスなどがその先駆者でコンテストに入賞し脚光を浴びたと記憶しています。
しかし、初期の段階では年度によるぶれも大きく、中米でこの方法で品質が安定するまでには何年かかかったと思います。

 

 

11月のテースティング会のテーマの一つは、中米のPNでした。
中米の優れたコーヒーの基本の香味は酸とコクのバランスが良いことです。
基本の酸は柑橘の果実であるレモン、オレンジ、完熟したミカン等で、コクは標高、品種、産地により異なり、ライトからフルまであります。

 

 
優れたPNは柑橘の果実の酸にやや甘い余韻が残ります。
同じ農園の豆であればウオッシュトよりはややコクは増す傾向にあることがわかります。
しかし、生産国や農園が異なればテロワールや品種による違いが生じますので一概には判断ができません。パナマのダンカンのようにウオッシュトでも素晴らしいコクを伴うものもありますし、コスタリカのクレストネスのようにミューシレージを機械で取り除いて乾燥する方法でもしっかりしたコクを感じることのできる豆もあります。

 

 
ただ、優れた香味の基準はクリーンさにもあり、このクリーンさの中にコクが生まれていれば素晴らしいPNだというのが所見です。