パパ日記

コーヒー&ワインとリーファーコンテナ-1

生豆は農作物であり、1年間の中で経時変化しますのでその鮮度は重要です。堀口珈琲におけるカッピングの重要性は、
その豆がどの程度香味を維持するか?
いつ頃香味のピークになり、いつ頃劣化しそうか?
について確認していくことです。

 

 

このことができないと、100種のシングルオリジンを購入している中で使用していく順番などが判断できません。
しかし、この生豆の変化を予測するカッピングスキルは3~4年で理解できることではなく、幾多の失敗や経験により積み重ねられてきたものです。

 

 

生豆を扱う以上、熱帯生産地と離れている日本においてこれは重要な問題となります。エアーで送られてくるプレシップサンプルと日本入港時の生豆の状態は当然異なります。
現地の状態で日本に入港になればよいのですが、ほぼすべてが1か月前後かかる海上輸送であり、その間生豆には大きなストレスがかかります。

 

 

輸送にはコンテナを使用します。
通常は日用品から工業製品まで幅広く使用される常温のドライコンテナが使用されます。しかし熱帯からの輸送ですので、赤道近くを航海することも多く船上に積み上げられたコンテナの最上段は50度程度まで達することもあります。

 

 

そこまで高温にならなくともコンテナ内は湿気や温度の影響があり、麻袋に詰められたコーヒーに何らかのダメージがあると考えられます。
勿論そこまで大げさに考えずダメージは軽微にすぎないので問題はないと考える珈琲関係者もいます。
またコストの面からも大部分の生豆はドライコンテナで輸送されます。

 

 

しかし、個人的にはプレシップサンプルと入港時の生豆の状態は異なる場合が多く、当然品質と香味に影響を与えますので定温の方がいいと考えます。

 
コンテナには、冷却装置の付いたリーファーコンテナ(定温コンテナ)がありますが、輸送コストがかなり高くなるため同じ嗜好品では高級なワインなどで使用されています。

 
ワインにおいてリーファーコンテナがいつのころから使用されたのかは確かではありません。おそらく私がブルゴーニュを飲み始めた30年前にはリーファーコンテナそのものが少なく、ワインでの使用事例はほとんどなかったのではないかと推測します。(データは不明です)
当時は、船内指定積み付け(船倉内のいい場所)位が主流であったと思います。
ワイン業界はそれで十分との見解でしたが、すべてにおいてそのような場所の確保ができるはずもなく、ワインの味は現地と違うとの見解は多くありました。

 

 
そのため、私が初めて日本でクリーンなワインに遭遇した時は大きなカルチャーショックを受けました。それは下記のような取扱いのものでした。
1.リーファーコンテナでの輸送
2.日本の夏に到着する輸送しない(コンテナを開けた時に温度差でダメージをうける)
3.陸送もリーファーを使用
4.定温倉庫に保管
5.店でも温度管理

 

 

これは流通、保管全体の流れの中で温度13~15度/湿度60~70%程度に管理されたワインでした。当時はこのようなワインは例外であり、その衝撃は今でも忘れることがなく、ワインのテースティングのクリーンさの基準となっています。ワインの濁りや味の変質は、輸送ばかりではなく国内での保管も重要でしたが、当時はワインセラーなどが完備した酒屋やレストランも少なかったと記憶しています。

 

 

そのため、多くのレストランで酸化したワインをどれほど飲んできたかを思知らされました……。
そのため、10年ほどこの輸入商社のワインを徹底して飲んだ訳です。
そうすると他のワインの品質のダメージが見えてくるようになったわけです。

 

 

昔に比べれば、ソムリエのスキルも向上しやワインに対する知識も増えましたので全体としてはよくなったといえますが、いまだに多くのレストランで状態の悪いワインを飲むことも多くあります。
しかし、顧客の多くの方も、場合によってはソムリエもそのことを理解できませんので、個人的には「しょうがないな」とあきらめてきました。
私が、ワインもコーヒーもクリーンなものが良いというのはこのあたりが原点でもあります。

 

 

たった30年前の日本のワイン文化は未成熟であったと思います。
1995年に田崎真也さんが世界ソムリエコンクールで優勝した20年前あたりから日本におけるワインの転換期が訪れたのだと思います。
続く