パパ日記

M&A-2 米国市場の変遷

歴史をさかのぼると、アルフレッド・ビートが1966年にサンフランシスコのバークレーに「ピーツコーヒー&ティー」を創業しています。
ピーツコーヒーは、当時の米国では珍しく品質のよいコーヒーを提供した良心的な店でした。学生時代にこのピーツコーヒーにあこがれ、ブレンドやローストを教わり、卒業後に友人とシアトルに1971年「スターバックスコーヒー・ティー&スパイス」を創業したのがジェリー・ボールドウィンです。

 

 

 

彼の1号店は、今や観光客のメッカともなったシアトルのパイクプレイス・マーケットです。バールではなくコーヒー豆を販売する店として出店しています。
その後1982にマーケティング担当としてハワード・シュルツが入社し、卸売りやテークアウトなどの方法を取り入れていきます。
ボールドウィンは品質にこだわりを持ち、シュルツの店舗展開とはかみ合わず、シュルツは1985年スターバックスを退社し、「イル・ジョウルナーレ」を開店します。
1984年には、ボールドウィンは投資家と共にピーツを買収しますが、その後1987年にボールドウインはスターバックスを、ハワードシュルツに売却し、ピーツコーヒーの経営に専念していきます。ざっとこんな流れでしょうか….。

 

 

 

ここまでの歴史の中で、米国のスペシャルティコーヒーの基礎がピーツコーチ―にあったともいえます。現在のバークレーの店の中の展示室には、スペシャルティコーヒー発祥の地と記されてもいます。

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ピーツ創業時の焙煎機でしょうか?

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もともと、スペシャルティコーヒーの言葉の起源は、40年近く前にさかのぼります。1978年のフランスのMontreuilのコーヒーカンファレンスで、kuntsenコーヒー会社のErna Kuntsenが、「特別な地理的な微気候は独特の風味のコーヒーを生み出す」とスピーチの際使用した言葉です。
その後、1982年に大手ロースターに対抗し、スペシャルティコーヒーの啓蒙、普及、市場の活性化の為に、米国スペシャルティコーヒー協会(SCAA)が設立されています。
しかし、現実的に産地に目を向け、その品質に目を向け始めるのは1990年以降と考えられ、米国でスペシャルティコーヒーやサスティナブルの活動が顕著になるのは2000年前後あたりからといえるでしょう。

 

 

 

1940~1950年代の米国は、200社程度のロースターがあり、一人当たり年間7kgのコーヒーを消費していましたが、コーヒーの品質はコモディティとローグレードのコーヒーで、年間1500万袋(60k/1袋)程度でした。

1970年代になるとロースターは20社に減り、大手5社のシェアが70%となり、コーヒーの消費は減っていきます。大量生産の時代になり、コーヒーは1%のスペシャルティ、その他99%はコモディティとローグレードコーヒーで、でコーヒーは薄くなり一人あたりの消費量は3kgと減っています。
当時の米国のコーヒーの品質は最悪の状態であった訳です。
(この時期のアメリカのコーヒーの影響を受けて日本に入ってきたのが薄いアメリカンコーヒーだと思います。)

この状況に対し、1982年にSCAAが誕生した訳です。

2000年に入ると、大手5社の65%のシェアに対抗してスターバックスやピーツコーヒーなどの革新的な会社が販売量を増やしてきます。
スターバックスは年間130万袋を使用するようになり、小規模ロースターが1755社に増え、スターバックスとともに35%のシェアをとるようになります。
一人あたりの消費量も3.5kに増え、年間使用量も1.860万袋となります。
その品質も、スペシャルティ16%、プレミアム14%、70%がコモディティとローグレードとなっています。
消費者は、よいコーヒーに目を向け、大手のシェアは低下に向かいます。
そして、後にサードウエーブと呼ばれるような会社がシカゴ、ポートランドなど地方都市から台頭し始めます。
そして2015年、消費量は拡大し2.300万袋を超えます。

注)当時の米国のコモディティはNY相場のもの、プレミアムはそれよいが80点未満のコーヒー、ローグレードはNY相場以下ですので、かなりひどいコーヒーを意味します。
しかし、2000年当時日本ではスペシャルティコーヒーという言葉はまだほとんど使用されてはいませんでした。2000年以降堀口珈琲は、シングルエステートとテロワールを求め産地に向かい始めましたが、このような活動が米国のスペシャルティのムーブメントの発展時期と重なっていたと思います。
2003年にSCAJが誕生しても、まだスペシャルティコーヒーの認知度は低く、使用量も把握できない状況が続きました。
2014年の日本のスペシャルティコーヒーは、7%程度と推測(SCAJJ調査)されますが、データのとり方で大きく変わりますので、このあたりはわからないといっておいた方が無難でしょう。

 

 

 

日本のコーヒー使用量は、全体で730万袋程度ですが、特殊な缶コーヒーマーケットがあり、インスタントも大きなシェアがあります。
我々が使用するようなレギュラーコーヒーは、全体の35~40%程度にすぎません。
そのような市場構造の中で、既存の大手ロースターは大量消費顧客その他でその位置を確保するも、中小ロースターはコーヒーの卸先である喫茶店の衰退とともに減少傾向にあります。
反面2000年代の10年間で自家焙煎店が2000店程度増加していると推測します。

 

資)全日本コーヒー協会
shttp://www.scaa.org/
CHRISTIAN WOLYHERS氏の2004年ブラジル大使館での講演