パパ日記

コロンビア・ゲリラとフェノール

気象変動やさび病による栽培適地の減少傾向下で、前述したハイブリッドコーヒーの必要性は増加傾向にあります。コロンビアでは、コロンビアからカスティージョ種へと変遷しています。
初期のコロンビア種は、まだ完成度が低く、香味の観点から言えばロブスタ種の特性を感じてしまうことが多くありました。(主には重い味という感覚です)

 

 

しかし、当時のコロンビアのコーヒー関係者は「何度もカツーラを戻し交配(バッククロス)しているのだから、ロブスタの味は消えている」とその論を替えようとはしませんでした。
当然、ロブの香味があれば価格は低下せざるを得ませんので、生産サイドからすればそのようにいうのは当然でした。

 

 

しかし、1990年代の中盤以降にはフェノールの問題も発生し、麻袋の中にたまに1粒か数粒激しい異臭を放つものが含まれているものが見られました。
当時は、コロンビア種の量産が絡んだ時期でもありましたので、精製の不備などで発酵槽に残った豆に農薬、土のカビなどが付着したのではないかなどと言われました。(詳しい調査結果は確認していません)

 

 

ヨードチンキのような薬品臭で、ブラジルのリオ臭とほぼ同じでした。
当時このことを日本の各商社に伝えましたが、なかなかそれを理解してもらえず、最終的には異臭サンプルを渡し、コロンビアに確認依頼した覚えもあります。
そうこうしているうち欧米からこの異臭の問題に対する反応が起こり、大きな問題へと発展していった訳です。

 

 

大部分のコロンビアは、コロンビア、カツアイ、ティピカなどの品種が混ざりますので、この時期、それらを使用することには抵抗があり、当方はティピカにこだわらざるを得ませんでした。
もともと、コロンビアはティピカの生産地でしたので、2000年以降にコロンビア種の混ざらないものを探しオズワルドと巡り会い、またタママウンテンも購入するに至った訳です。

 

 

しかし、伝統品種であるティピカはそのクリーンでさわやかな香味に反し、極めて厄介な豆でした。
豆質はやわらかく、日本入港まで鮮度状態を維持することが難しく、リーファーコンテナの使用、定温倉庫での保管が必要と感じ、リスクヘッジの為それを実践しました。
当時は、リーファーコンテナの使用事例がほとんどなくその確保も以外に厄介なことでした。

 

 

更に厄介なことは、毎年収穫から乾燥、選別がうまくいくとは限らず、生豆輸入の厳しさをいやというほど思い知らされた産地でもあります。
勿論他の産地でも様々な失敗を繰り返しながら、生豆調達の基礎を築いてきたわけです。
この思いは、生豆購入のリスクを負う人には理解されるでしょうが、自家焙煎店や大部分の焙煎業(ロースター)の方には理解できないでしょうし、喫茶やカフェの方々にはまったくわからない世界です。

 

 

また、当時コロンビアの産地の一部は、コロンビア革命軍ゲリラや麻薬組織の影響下にあり、産地に入ることが困難な状態が続いていました。
日本の商社も限定された産地以外は出張許可が出ず、又コロンビアの輸出会社も思うような活動ができない状態が続いていました。

 

 

そのような状況下で、コロンビアコーヒーの品質のぶれは著しく、その状況を把握することは困難でしたので、長い間コロンビアコーヒー不毛の時期があったと個人的には考えています。これらのことがあり、やむを得ず長い間コロンビアをブレンドのベースに使用しなかった訳です。

 

 

その後2002年以降のウリベ大統領による治安対策から、コロンビアの内戦状態は解決の方向に向い、2000年代の後半以降には少しづつ南部地域のコーヒーサンプルも出るようになった訳です。
現在サントス大統領の間で和平交渉が進展しているはずです。

 

 

現在は、FNCや輸出会社の産地開発も進み、ナリーニョ、ウイラなどの産地にも入ることができるようになり、現在の堀口珈琲のコロンビアが皆様にお届けできている訳です。

 

 

コロンビアは本来、明確なボディのあるよいコーヒーができるはずと信じていました。
1990年の開業以来20年近い長い苦悩を経て、2010年頃から、南部産の優れたコロンビアも生まれ初め、コロンビアの新たな香味の世界が展開されつつあると感慨深いものがあります。
(コロンビアに対しこのように感じていたのは私だけかもしれませんが…..)

続く