たのしいコーヒー

【 COEDO×堀口珈琲 】ブルワーとロースターが語る!「暮音-Kureoto-」の制作秘話

【 COEDO×堀口珈琲 】ブルワーとロースターが語る!「暮音-Kureoto-」の制作秘話

こんにちは。ブランディング部の中川です。

今年もコエドブルワリーさんと5年目となるコラボレーションを実施し、7月20日にコーヒーエール【暮音-Kureoto-】が発売されました。発売から一ヶ月以上経ちましたが、すでにお召し上がりいただけましたでしょうか?  

今年は初めての取り組みとして、季節に合わせて2種の銘柄を販売することにしました。現在販売中の夏に楽しむコーヒーエール【暮音-Kureoto-】と、11月頃に発売を予定している秋冬向けのコーヒーポーター【克一黒-Kokuikkoku-】です。
 

今回は暮音ができるまでの経緯や、試作時の裏話、さらに次作に向けての意気込みなどをコエドのブルワー(醸造担当者)目黒さんと当社のロースター(焙煎担当者)中島にインタビューしました。

 
 

 

左:堀口珈琲のロースター中島 右:コエドブルワリーのブルワー目黒さん

 

 

 

 

真夏のコーヒーエールができるまで


 
 
 
――暮音、無事に発売されましたね。仕上がりについて、いかがですか?  

 
目黒:夏らしいすっきりとした味わいに仕上がりました。  


中島:麦芽(モルト)の甘みに、コーヒー豆の果実感が綺麗に溶け込んで、とてもおいしく仕上がったと思います。  
 
――今回のベースビールのスタイルはゴールデンエールですが、そのスタイルに行き着いた経緯をお聞かせください。  
 
目黒:これまではコーヒーをイメージする色のアンバーやダークなスタイルのものを秋から冬にかけて販売することが多かったのですが、堀口珈琲さんから、「夏に楽しむコーヒービール(※1)」を作りたいという要望を聞いて、エールスタイルで見た目も淡いコーヒービールに挑戦してみても良いかもしれないと思ったんです。実は去年の「黒艶 -Kokuen-」を製作している段階からセゾンスタイル(※2)もいつか作ってみたい、と漠然と思っていました。

※1暮音は製造工程の関係で酒税法上「発泡酒」扱いです。

※2 セゾンスタイルとは、ベルギー発祥のビール。かつて農家が夏に農作業をする間、喉の乾きを潤おせるよう飲んでいた。やや酸味があり、フルーティな味わい。

中島:そうですね。過去2年は秋にじっくり楽しむスタイルだったのですが今年は夏に楽しむコーヒービールを販売したいと思い、目黒さんにどんなスタイルがよいかご相談させていただきました。

目黒:試作時に使用したセゾンはビール自体のキャラクターが強く、コーヒーの風味を引き出すことができませんでした。そこで「夏らしさ」をイメージするという意味では、セゾンに比べてコーヒーと合わせやすい、淡い金色をしたゴールデンエールが候補に上がりました。

中島:コーヒーの複雑なフレーバーと、セゾンの酵母由来の風味がお互いを消しあっている印象がありましたね。それに比べて、ゴールデンエールは「味の余地」があったので、コーヒーがうまくはまったように感じます。

 

  ――漬け込むコーヒー豆(エチオピア「【ウォルカ】クレイウォット」 ナチュラル)はどのように選んだのでしょう?

   
中島:マンデリンやイエメン、ケニアやエチオピアなどの個性が強いコーヒーを、焙煎度違いや精製違いで用意してとにかく試作を重ねました。その中でも今年のクレイウォットは出来がとてもよかったですね。フレーバーや柑橘の味わいが素晴らしく、味の密度も高かったんです。試作の段階でも他のコーヒーに比べて一番バランスが取れていたので、今年はクレイウォットのナチュラルでいこう!と決まりました。    


試作時の様子

 

コーヒー豆とホップの相性は悪い?


――素材を供給する上で意識したことを教えてください。

目黒:やっぱりテーマが夏向けなので、ベースビールは比較的ライトで飲みやすいものを目指しました。スタイル的にはシンプルなのでホップで個性を出すことができますが、そこは抑えて、コーヒーの風味を活かせるようレシピを考えました。

 
――目黒さんは日頃から当社のコーヒーを召し上がってくださっていますよね。今回も漬け込む前にクレイウォットをコーヒーとして召し上がっていただけましたか?  


目黒:堀口珈琲さんとコラボするようになってから、コーヒーは日常的に飲むようになりました。そのおかげでコーヒーの果実感やキャラクターなどはわかるようになりました。今回はクレイウォット ナチュラルの風味を活かせるよう、ホップの量は抑えて、麦芽(モルト)の配合にこだわりました。全体的にすっきりとした味わいを目指しているので少し矛盾しているように聞こえますが、ビール自体にはボディ感がないとコーヒーとうまく調和しないような気がしているんですよね。なので、ベースビールはボディ感、つまり甘さが出るようにカラピルスモルト(デキストリンモルト)を使用して調整しました。

中島:漬け込む前の試飲時に確かに甘さを感じました。あれはホップの量を抑えて、モルトのバランスを調整してくださったんですね。だから、コーヒー豆のネガティブな香ばしさがなかったのか……。今回、新たな発見だったのですが、コーヒーとホップの相性って実はそんなに良くないんじゃないか、と感じました。

目黒:うーん……そこをうまくやっているブルワリーもあるんでしょうけどね。

中島:これは引き続き試作で検証してみたいですね。結果次第では、今後はホップの量を抑えてコーヒーで風味を表現していきたいです。

 

――――コーヒー豆を供給する上で工夫したことはありますか?

 

中島:「クリーン」な味わいを表現するために、適切な焙煎度を探りました。コーヒーって素材そのものの品質はもちろんですが、焙煎が適切にできていないと渋くなったり、豆に火を与えすぎると香ばしくなったりしてしまうんです。

 

実際にビールに漬け込んだコーヒー豆 エチオピア「【ウォルカ】クレイウォット ナチュラル」 シティロースト

 

ちなみに、クレイウォットはエチオピアのナチュラルの中でも味わいが複雑で、その分いい意味でナチュラル感(熟した果実のようなフレーバー)が少ないんですよね。クレイウォットから感じられるフレーバー、果実感はしっかりとビールに溶け込んでいますが、ナチュラル感を強く感じるものではないかもしれません。 まず前提として「ビールとしておいしいもの」を目指しているので、そこをお楽しみいただきたいです。暮音の完成度はもちろん高いんですけど、次回はもう少しコーヒーの風味がわかりやすいものにトライしてもよいかもしれません。

 

 

3年目のホップガン


 

ホップガンでの味付中。何度も試飲を繰り返す。

 
 
――ホップガン(※)での作業はいかがでしたか?

※ビールにコーヒーの風味を付加する際に使用する機械。詳細は#2 ベースビールにコーヒー豆を漬けるをご覧ください。

目黒:ホップガンでの味作りは3年目になるのでだいぶ落ち着いてできたと思います。ベースビールの味もわかりやすかったので、特に不安もなく完成まで持っていけました。ビアスタイルによってコーヒーの風味の出方は変わってきますね。

中島:そうですね。先程も言いましたが、コーヒーの風味の出方はホップとのバランスなんだと、今回確認することができました。  

目黒:次回、ホップの量を思い切って減らしてみましょうか!?  

中島:ありがとうございます。次回のコーヒーは焙煎度が深いので、苦味もしっかり出てくると思います。それがホップの苦みの部分を補えるんじゃないかなと感じています。 今回の気付きをもとに、これまで試作で合わないと感じてきたコーヒー豆をもう一回試してみたいですね。

目黒:試してみましょう。いつか、ホップなしのものもできそうですね。グルート(※)になりますけど。

※グルート:ホップがビールに使用される以前に中世ヨーロッパでビールに風味づけに使用されていたハーブなどのこと。それを踏まえてホップを使わずにハーブなどで風味づけをしたものをグルートと呼ぶことがある(ホップを使用しないため、日本の酒税法上では「ビール」ではなく「発泡酒」の区分になる)。  

中島:次回の「克一黒」もホップの量を調整してみて、おいしくできたら今後の方向性を考えていけたらと思います。  

 

――克一黒の話も出てきたところで、次回への意気込みをお聞かせください。  

 

中島:ホップの投入量がコーヒー由来の香ばしさに影響を与えるのではないかという推論に辿りつくことができたので、次回も間違いなくおいしくできると思います。ただホップを減らすことで逆にすっきりしすぎた仕上がりになる可能性もあるので、その点は注意が必要ですね。  

目黒:今回、暮音がライトで飲みやすいビールだったので、克一黒は秋冬向けに濃厚でゆっくりと味の変化を楽しめるものを作りたいです。アルコールは高くないけど、飲みごたえのあるもの、ですね。頑張ります!  

 

――克一黒の発売が今から楽しみです。最後に、このコラボレーションの魅力についてお聞かせください。 
 

目黒:どんな商品を作るか、お互いにアイデアを出しながら試作を進めていけるのがとても楽しいですね。あとコーヒー側からの視点で感想をいただけるのがとても勉強になります。 できるだけ続けていって、色々な味わいのコーヒービールを作りたいですね。  

中島:ありがとうございます、嬉しいです。ぜひ継続していきましょう。 コーヒーを液体として楽しむ時と、ビールにコーヒー豆を浸けた時の風味の違いがおもしろいですね。意外と「このコーヒーおいしい!」と思っても、ビールに浸けてみたらネガティブな部分が出ていたり、その逆もあったり。液体のコーヒーを飲んでいるだけではわからない気付きや理解が深まります。また、独自の方向性でコーヒービールを作っているのがとても楽しいですし、この取り組みをコエドさんのお客様、そして当社のお客様へもっと伝えていきたいと思っています。

出来上がりのものがおいしいと本当に嬉しいなと思うので、今後も頑張っていきたいです。  

 


終わりに


 
「スペシャルティコーヒーとクラフトビールの多様性を感じられるものづくり」をテーマに、2018年から始まったこのコラボレーション。回数を重ねるごとに新たな発見があり、両社のものづくりに良い影響を与えているのではないでしょうか。  

当社のロースターは、昨年度からプロジェクトに加わった中島が、前任のロースター・大瀧からバトンを受け取り今年はメイン担当として味作りを担いました。試作の段階では大瀧もサポートをし、これまでの経験と知見を中島に引き継ぎながら進めていきました。  

次作は秋冬に楽しむコーヒーポーター。どのような味わいに仕上がるのでしょうか。楽しみにしてお待ちください!

 

 

※今回のインタビューの番外編として、ブルワーとロースターで「暮音」のペアリングを実践しました。記事はこちらをご覧ください。

 
 
 

コエドブルワリー(COEDO)について


 

 
COEDOは、1970年代から先駆けて有機栽培や特別栽培により生産される農産物を取り扱う青果事業を中心とする㈱協同商事が設立母体の埼玉県川越市発のブルワリーです。同地域の名産品であり、落ち葉堆肥農法という循環式農業で栽培されるさつまいも「紅赤」の規格外品と連作障害対策の緑肥としての大麦の有効活用を着想の原点に、ビール醸造を1996 年に開始しました。
「Beer Beautiful」をコンセプトに掲げ、「紅赤-Beniaka-」を筆頭に、日本の職人たちの細やかなものづくりと『ビールを自由に選ぶ』というビール本来の豊かな味わいの魅力をクラフトビール「COEDO」を通じて、武蔵野の農業の魅力とともに発信しています。
シカゴ・ワールドビアカップ、ニュルンベルク・ヨーロピアンビアスター、ブリュッセル・iTQiなど、世界の品評会で受賞し、品質とブランドデザインにグローバルな評価を得ており、各国に輸出もされています。
2020 年 7 月には、川越駅西口 に「ブルワリーのある街づくりの共創」をコンセプトに、新業態となる醸造所併設レストラン「COEDO BREWERY THE RESTAURANT」と生ビールを専用容器「グロウラー」でテイクアウトできる小さな売店「COEDOKIOSK」をオープンしました。
 
WEB:https://www.coedobrewery.com/jp/
ONLINE SHOP:https://webshop-coedobrewery.com