堀口珈琲の大人気シリーズ(にしたい)、コーヒーの表現企画。
第一弾の『質感』に続き、第二弾のテーマは『果実感』です!
今やスペシャルティコーヒーの風味表現と切っても切れない関係。今回はこの『果実感』について掘り下げていきたいと思います。
そもそも「果実感」とはなんぞや?何を表すの?どんな表現がある?どんなコーヒーに使う?などなど、果実感に関わるイロハを楽しくおいしく、堀口珈琲らしく紹介していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、一歩踏み込んだコーヒー体験とコーヒー選びに役立ててください。
「果実感」の正体
私たちロースターがコーヒーの香味を言葉にする時、「フルーティー」「果実感がある」といった表現を使用することがあります。スペシャルティコーヒーをよく飲まれる方は見慣れているかもしれません。それらは「華やかで甘みのある香り」や「果物のような酸と甘みのある味わい」のことを指しており、香りと味の両方で感じることができます。
高品質なコーヒーからは、レモンやグレープフルーツ、オレンジなどの柑橘果実を基本として、
赤い果実・・・ラズベリー、いちごなど
南国果実・・・パッションフルーツ、アップルマンゴーなど
白い果実・・・白桃、ライチ、メロンなど
乾燥した果実・・・ドライいちじく、レーズンなど
などを想起させる酸を感じることがあります。上記の酸のタイプに加え、香り・甘さ・質感それぞれの質と量の組み合わせが、一定のバランスで結びつくことで具体的な果物を連想でき、「果実感」として感知することができていきます。
例えばエチオピア「【ウォルカ】クレイウォット ナチュラル」のような個性の明確なコーヒーの抽出液に鼻を近づけ口に含むと、まるで「いちご」のよう、という具合に「具体的な果物」が真っ先に思い浮かびます。次に、なぜ「いちごのよう」に感じたのかを考えます。その際、一体となった「いちご」のような風味を香りや酸、甘さ、質感などに分解して考えていきます。
別のコーヒーではこれが「華やかな香りと温州ミカンのような酸と甘み。」となったり、さらに別のコーヒーでは「とろんとした質感、明るく華やかな酸、しっかりとした甘さはまるでアップルマンゴーのよう。」などと表現することもあります。
つまり果実感とは香り・酸・甘さの質と量、質感などの複数の要素からなる複合的な感覚と言って良いかもしれません。
「果実感」と焙煎度の関係
同じコーヒーでも焙煎度が変わると、口に入れて飲み込むまでに「果実感」を感じるタイミングにも影響が現れ、飲んだ時に具体的に連想する果実の種類も変わってきます。
深煎りでは果実感が余韻に現れやすいのは、他の香味要素とより複雑に絡み合った中で「果実感」の存在があるからです。
前述の【「果実感」の正体】でも述べましたが、果実感は酸と甘さの質と量、質感などが結びつくことで具体的な果物を連想でき「果実感」を感知することができています。
焙煎度が深くなると、酸の明るさや量は減り、苦みと甘さの量は増え、質感は厚みを増し、余韻は長くなる傾向にあるため具体的に連想する果物も変化していきます。
例えば…
大人気商品のインドネシア「LCFマンデリン」の場合
ハイロースト(中浅煎り)では、明るい酸と瑞々しさが印象的でパッションフルーツやレモンなどのすっきりとした果物を連想させます。
シティロースト(中深煎り)になると、明るい酸は健在ですが、ボディに厚みが出て粘性のある甘みを感じはじめるため、アップルマンゴーのようなコクの強い果物のニュアンスを感じられるようになります。
フレンチロースト(深煎り)まで深くすると、酸の明るさはほとんど感じなくなりますが、より厚みが増し、黒い果物のような風味、果物だけではなくスパイシーな風味も感じられ複雑な風味になります。柑橘や南国果実に加え、黒い果実、スパイシーさ、きめの細かく厚みのある質感は、どこか熟成された赤ワインや洋酒のように感じられることもあります。
ブレンドと「果実感」
続いては、堀口珈琲が自信をもっておすすめする「ブレンド」との関係について探っていきます。
各生産地のコーヒーが、どの焙煎度にも適応できるとは限りませんが、風味の特徴を縦軸とし焙煎度を横軸とすると、それらの組み合わせにより多様な風味が表現できます。
ブレンドを作るときは、素材の個性を見極め、似た果実のニュアンスをもつ素材同士をぶつけて、より“一体感”をだしたり、口に含んでから感じるタイミングの差で“広がり”をもたせたり、違う種類の個性を合わせて“複雑さ”をだしたりしています。
例えば…
私たちのCLASSICシリーズの#2と#3を比較すると、どちらの香味もフルーティーではありますが「果実感」の捉え方が全く異なります。
#3は、柑橘果実のやさしい酸味にやわらかな苦味が調和し広がるマイルドなブレンドです。柑橘果実の風味にフォーカスして中米を中心に素材を合わせています。そこに南米の少し違う柑橘果実のニュアンスを加えることで、各素材がもつ柑橘のニュアンスの微妙な違い、感じるタイミングの差を利用して一体感を表現しています。
一方で#2は柑橘からトロピカルまで果実のニュアンスがたっぷり感じられるブレンドです。エチオピアのウォッシュトとナチュラルを両方使用し異なる果実感をもつ素材を合わせ、中米コーヒーの柑橘の果実感がアクセントとして働き、果実感の複雑さを表現しています。
まとめ
ここまでご紹介してきた堀口珈琲の「果実感」。いかがでしたでしょうか。
「コーヒーの香味は果実である」ということと同時に「コーヒーの香味は果実だけではない」ということ。
堀口珈琲では、この考え方を念頭に置きながら、ブレンド作りや焙煎の方法、コーヒーそのものの風味を伝えることに取り組んでいます。
それは同時に、この表現を受け取る皆様にも、ぜひ気に掛けていただきたいことでもあります。
一見して意味不明なフレーズですが、ここまで記事を読んでいただいた方でしたら、なんとなくでもわかっていただけるはず!
後は実際にコーヒーを飲んで、感覚と併せて確かめていただくことによって、より充実したコーヒー体験になること間違いなしです。